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家づくりマガジン
2020.07.12

住宅における「無垢材」。お施主様に知ってほしい種類、メンテナンス、豆知識を徹底解説

完全自由設計のクラシスホームでは、無垢材を使った住宅を希望されるお施主様が多いです。無垢材は“天然の木”という性質から、選び方、メンテナンスの方法、デザイン性など、個性的な特徴を備えています。そこで今回は、無垢材を専門的に扱うメーカー「株式会社マルホン」の内山雅人さんをお招きして、“無垢材”をテーマに詳しく解説してもらいました。

 

無垢材と集成材。それぞれのメリットとデメリット

―マルホン様は、床、天井、壁などに使う無垢材に特化した内装建材のメーカー。無垢材のスペシャリストとして、“住宅にとっての木材”をテーマに詳しく教えてください

まず家づくりで使われる木材は、「無垢材」と「集成材」に大別できます。森林で育った原木を伐採し、その丸太から挽き割った木材が「無垢材」。対して、薄い木版を接着剤で固めた木材が「集成材」です。多くの家は集成材をメインに使って建てられますが、リビングや子ども部屋、玄関など、部分的に無垢材を取り入れた家も増えてきました。もちろんどちらの木材にもメリットとデメリットがありますので、順に解説します。

 

無垢材のメリット

  • 木目と香りが快適感を与えてくれる

丸太から挽き割った時とほぼ変わらない状態で使われるので、木が持つ本来の風合いがそのまま感じられます。

 

  • “本物感”が家具の美しさを引き立てる

集成材のデザインも進化し、より無垢材らしさを演出できるようになりましたが、やはり天然木が持つ風合いにはかないません。“本物”に囲まれて暮らすと、自ずと気分も華やかになります。また、家具やインテリアを引き立て、より美しく見せてくれるのも見逃せないポイントです。

 

  • 経年による表情の変化を楽しめる

無垢材は革と同じで、使い込むほどに風合いが増して表情が変化していきます。木目に濃淡が現れたり、ツヤが増したりするなど、“樹種”によって変化の仕方も様々。張ったばかりの状態も美しくて香りもよいですが、経年による独特の“味”も無垢材の醍醐味です。

 

  • 機能性に長けた材料

調湿や殺菌、リラックス効果といった住む人に快適性をもたらす機能的な一面も持っています。

 

無垢材のデメリット

  • 集成材よりも初期コストが高い

大量生産しやすい集成材と違って、天然の木そのものである無垢材は、原木から建材として使える量が限られるためコストがかかります。なお、初期コストは高くなりますが、定期的にメンテナンスすることで、よい状態を長くキープできる一面も。そのため高い初期コストも、長期的に考えると大きなデメリットとは言えません。

 

  • 反りや割れが生じる可能性がある

天然木は生きているため、収縮と膨張を繰り返します。その結果、隙間ができたり、反りや割れが起きたりする可能性もあります。無垢材は集成材に比べて材料自体の変化が大きいため、注意が必要です。

 

  • 樹種によっては傷つきやすい

樹種や商品によっては、物を落とすと凹んでしまうなど傷つきやすいことも。例えば普段の生活でスマホを落としてしまうことが考えられますが、樹種によりその角が無垢材の床に当たると、凹んでしまうこともあります。

 

集成材のメリット

  • 無垢材よりも価格が安い

小さな板材を張り合わせた集成材は、原木を無駄なく使い切ってつくることができるので、製造コストが抑えられ、建材としての価格が安くなります。

 

  • 無垢材と比べ、反りや割れが生じにくい

無垢材と比べると、強度があるため反りや割れの心配が少ないと言えるでしょう。また無垢材のように収縮や膨張を起こさないので、床に隙間ができるケースも少ないです。

 

  • 職人さんが扱いやすく、施工がスムーズ

量産品で安定した品質を保って納品され、かつ強度のバラつきも少ないため現場の職人さんにとっては扱いやすい材料として知られています。職人さんが扱いやすいということは、施工がスムーズ。寸法に狂いが生じることなく家ができます。

 

集成材のデメリット

  • 自然の風合いが無垢材には及ばない

無機質とまでは言えませんが、無垢材のような“自然の風合い“を100%再現するのは難しいです。集成材の種類によっては、木目がバラバラで均一性に欠けるものもあれば、均一的になりすぎて不自然に見えてしまっていることも。

 

  • 化学物質が人の健康をおびやかす可能性が

化学物質が含まれる接着剤を使って張り合わせているので、その揮発によって人体に健康被害を与える可能性が。アレルギーなどの心配がある方は特に、注意が必要でしょう。

 

  • 老朽化による張り替えのコストがかかる

集成材に使われている接着剤は、湿気に弱く、経年によって接着力が弱まってきます。そうなると、張り合わせてある板が剥離し、床であれば張り替えが必要。予期せぬタイミングで家計に負担がかかります。

 

 

 

樹種によって「色合い」と「雰囲気」がガラリと変わる

―無垢材のメリットのご説明で「樹種」という言葉が出ました。つまり、無垢材にもいろいろな種類があるということだと思いますが、それぞれについて教えていただけませんか

樹木は「針葉樹」と「広葉樹」に分けることができ、それぞれ特性が異なります。

 

「針葉樹」は読んで字のごとく、針を思わせる細い葉が大きな特徴。幹は長くまっすぐ育ちます。対して「広葉樹」は幹が太く、枝分かれしているのが特徴。葉の形状は、こちらも字面の通りで、広く大きいです。また、針葉樹は落葉しない常緑樹ばかりで、広葉樹は常緑性と落葉性に分けることができます。

 

私たちは針葉樹を「ソフトウッド」、広葉樹を「ハードウッド」と呼んでいます。この呼び名からも分かるように、ソフトウッドは軽くて柔からく、ハードウッドは重くて堅いです。顕微鏡で見てみると一目瞭然なのですが、基本的に針葉樹は木の細胞と空気の隙間が多い組織形態になっていることが多いです。要するに、密度が低くなっているので、軽くて柔らかくなるということ。逆に広葉樹は細胞と空気の隙間が詰まっているので、密度が高くなっていることが一般的。従って、重くて堅いのです。

 

続いて、マルホンで人気の樹種をいくつか紹介します。

 

  • オーク(広葉樹)

欧米では、無垢材と言えばオークが大定番です。日本でもしばらくオーク人気が継続中。オークの丸太をど真ん中から切り出した無垢材には虎の模様のような斑が見え、これがオークならではの個性と言われています。精悍な木目は和洋どちらのテイストにもぴったり。

 

  • ウォールナット(広葉樹)

世界三大銘木に数えられ、高級木材の代名詞。暗褐色の大人びた色合いに惚れ込む人が多いです。床材に使うと、落ち着いた雰囲気に仕上がります。また、古くから家具や楽器、彫刻品などの材料としても使われてきました。こちらの和名はクルミです。

 

  • ブラックチェリー(広葉樹)

ブラックと言いながらも、使い始めはきれいな琥珀。経年すると色は大きく変化し、紅褐色となって、ウォールナットと同じく大人びた印象を感じさせます。こちらも古くから、家具材としてよく使われてきました。

 

  • パイン(針葉樹)

和名は松の木。白っぽい見た目は、素朴でやさしい風合い。カントリー調やカリフォルニアスタイルの住まいとの相性は抜群です。無垢材の中では流通量が多く、比較的安価なので、リビングの床としてふんだんに使いやすいでしょう。また、節が多いのも特徴です。

 

  • ヒノキ(針葉樹)

古来から日本では高級建築材として知られた木です。針葉樹でありながら強度と耐久性に優れており、家の強度の要となる構造材のほか、内装用の建具にも使われてきました。この木に含まれる「ヒノキチオール」という芳香物質はリラクセーション効果があり、温泉宿のヒノキ風呂で極楽気分を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。また、見た目は黄白色で、未塗装でもツヤ感があり、鑑賞したくなるような美しさです。

 

無垢材は“天然のエアコン”でもあり、“天然の空気清浄機”でもある

―無垢材のメリットのご説明で、「機能性」についての話がありましたが、無垢材を住宅の建材に使用することで得られる、具体的な機能性についてご解説をお願いします

実は無垢材は、調湿効果を発揮する“天然のエアコン”とも言われているんです。夏は湿気を吸収し、空気が乾燥する冬は、湿気を発散して、室内の湿度を快適に保ってくれます。特に夏はサラリとした肌触りが心地よし。「フローリングが快適!」という声も聞かれますよ。

 

先ほどヒノキには、「ヒノキチオール」という芳香物質が含まれるとお伝えしました。また、ウォールナットと同じ世界三大銘木のひとつ、チークは天然の油分が豊富で、その中に「テクトキノン」という成分が含まれいます。これらは、虫や菌から私たちを守る働きを持っており、さらには脱臭効果も。無垢材は天然のエアコンであると同時に、“天然の空気清浄機”でもあるんです。

 

突然ですが、「1/fゆらぎ」という言葉はご存知でしょうか。これは、規則正しさと不規則さのバランスが程よく取れた状態のことです。自然界に存在する独特のリズムであり、木の年輪の間隔からも「1/fゆらぎ」が感じられると言われています。何と「1/fゆらぎ」には、心地よさを与える効果があり、無垢材の年輪を見ることで人は自然にリラックスできるのです。

 

基本的に針葉樹は、明るく木目もはっきりしており、重厚感があるというよりはあたたかで穏やかな印象を与えてくれます。これに「1/fゆらぎ」が加われば、リラックス効果も大。もし無垢材に癒しの効能を求めるのなら、針葉樹で決めるというのも得策かもしれません。

 

それらパインやヒノキ、スギなどの針葉樹は木に含まれる空気層が厚く、熱伝導率が低いため、より保温性・断熱性に優れている特徴もあります。無垢材の“あたたかみのある素材”としてのイメージは、木材の特性によって説明できるんですよ。

 

自分でもできるメンテナンスを施して、よい状態をキープ

―無垢材は塗装の種類によって、メンテナンスの必要があるそうですね。内山さんもメンテナンスを行えばよい状態をキープできるとおっしゃいましたが、具体的にはどんな作業を指すのでしょうか?

メンテナンスは、専門業者による大がかりな作業だけではありません。家でも簡単にできることがありますので、家事のついでに行ってみてはいかがでしょうか。

 

家でできる簡単メンテナンス

  • 掃除機は使用OK!無垢材だからと言って、掃除の手間や難度が上がるわけではない

掃除機の使用は問題ありません。「傷をつけるのではないか?」と心配になる方は、ほうきや薬剤がついていないフローリング用モップでホコリを取るのもよいでしょう。また、乾拭きも有効です。「布巾で水拭きすればよりきれいになるのでは?」という質問もいただきますが、無垢材に過度な水分を与えるのは極力避けていただきたいです。表面塗料の種類次第では水拭きもOKですが、その際は固く絞った布巾を使ってください。

 

  • 油汚れは台所用中性洗剤を使えば安心

調理中や子どもの食べこぼしによる油汚れは、台所用中性洗剤が効果的。洗剤をお湯で薄めて、布巾を軽く湿らせて拭き取ります。その後は必ず乾拭きしてください。

 

  • マジックのインキは、まず消しゴムで対処

「マジックで落書きされた……」。子どもがいる家ならよく聞く話です。そういった際は諦めず、まずは消しゴムでこすってみましょう。案外これで解決することもあります。もし消えない場合は、ベンジンやエタノールで拭き取ってください。それでもダメならホームセンターで買えるサンドペーパーで表面を削るという方法もあります。

 

  • 凹みは水気を与えれば元通り!

ケータイ、おもちゃ、キッチン道具など、生活の中でこれらを無垢材の床に落とすことは珍しくありません。落とし方によっては、床が凹みますが、水を少量含ませてあげると翌日にはほぼ元通りになります。これは職人さんも使うテクニックなので、ぜひ覚えておいてください。また、濡れた布巾を凹んだ場所にかぶせて、アイロンで熱を与えるとすぐに直ります。もし大きく凹んだ場合や、広範囲にわたってささくれができてしまったら、専門業者に依頼するのがベターです。

 

  • 年に一度の再塗装で、無垢材を水、汚れ、傷から守る

無垢材は、表面を水、汚れ、傷から守るため、仕上げに塗料が塗られます。これには、いろいろな種類がありますが、代表的なものは、浸透性塗料。聞きなれないかもしれませんが、植物性オイルや蜜蝋のことです。浸透性塗料の油分は、摩擦や経年により抜けてしまいます。そうすると、水、汚れ、傷から表面を守る力が弱くなるので、改めて塗り直しが必要です。人がよく通る場所、よく拭き掃除をする場所を中心に塗料を薄く塗り、ウエス(Tシャツやシーツなどのはぎれ)で擦り込むように拭きます。この作業を年一回行ってもらうことをおすすめしていますが、「失敗しそう」と不安な方は、マルホンで対応することができるので、ご安心ください。

 

 

暮らし始めると、日々の忙しさからメンテナンスを忘れてしまいがち。傷や汚れをそのままにしておくと、それも“味”となるかもしれませんが、美観性は損なわれるでしょう。マルホンは無垢材のプロ集団ですから、メンテナンスもお任せいただければ、新築当時のような表情を蘇らせることができます。

 

※今回ご紹介した「メンテナンス」は、塗装の種類によっては一部できないこともありますのでご注意ください

 

法隆寺やタイタニック号でも無垢材は大活躍

―丁寧な解説と豊富な情報量は、さすがプロですね。ちなみに、無垢材の豆知識もぜひ聞きたいです!

無垢材は寺社仏閣の建材に使われており、日本最古の木造建築物の法隆寺(奈良県)が有名です。1400年も前に建てられた法隆寺には、ヒノキが使われていました。昭和の大修理では、傷んでいる木を新しいものに取り替えることが検討されましたが、いざ職人さんがかんながけをしたところ、ヒノキの香りが漂うほどよい状態だったそうです。もちろん定期的なメンテナンスが施されていたからこそですが、それでも1400年の無垢材がまだ使えるとは、修理に携わった皆さんも想像していなかったと思います。

 

機能性についての話の中で、チークは虫に強いことにふれましたが、水に対しても耐久力があり、堅くて腐りにくいことでも知られています。こうした特性から、家具、窓枠、桟橋など、幅広い用途で重宝され、豪華客船のタイタニック号やクイーンエリザベス2世号でも使われているんですよ。

 

ちなみに、マルホンの本社や私の自宅にもチークを使っています。やはりいろいろな木材の特性を知ると最終的にチークに落ち着くことが多く、見た目の良さだけではなく「木としての性能の高さ」が魅力。チークは何年も、何十年も安心して使っていただけると思いますよ。

 

無垢材は、ともに人生を歩む家族の一員

―最後に、内山さんが思う無垢材の魅力を語ってください!

見た目としての美しさ、健康や快適生活を維持する機能といった特徴の中でも、個人的には経年変化こそが無垢材最大の魅力だと思っています。革製品やデニムのように、使い込むほどよい表情を見せ、始めとは異なる雰囲気を醸し出すようになると、その先がさらに楽しみになるでしょう。

 

また、メンテナンスは手間だと思われがちですが、手間がかかるからこそ愛着もわくのではないでしょうか。私自身も無垢材を使った家に暮らしていますが、ともに人生を歩む家族の一員のような存在だと思っています。

 

クラシスホーム×マルホンのクロストークの記事では、

マルホンの内山雅人さんとクラシスホームのインテリアコーディネーターが、

無垢材を扱う上でのこだわりや、無垢材への想いなどを、それぞれの目線で語り合います。

下記より是非ご覧ください!

『「無垢材の魅力を生かした住宅に」。クラシスホームが提案する無垢材住宅とは?』

 

 

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★Profile

内山雅人/株式会社マルホン・第三営業部

大学卒業後は、今の業界とは異なる都内の企業に就職。営業職を4年務め、地元の浜松市にUターンしたのをきっかけにマルホンに転職。「扱う無垢材は、世界各国から仕入れる最高品質のもの。自分が自信を持っておすすめできる商材を受け入れてもらえた時は、本当にうれしい」と日々仕事に手応えを感じている。ちなみに、自然が好きなので、休日はもっぱらアウトドアな過ごし方。キャンプや川遊びに繰り出すことも多い。

 

[株式会社マルホン]

国内外の木材原産地から無垢材を仕入れる専門メーカー。フローリング・パネリング・モールディング(造作部材)・カウンター・階段材といった内装部材のほか、塗料などの副資材も扱っている。販売先はハウスメーカーや工務店など。無垢材のプロとして、メンテナンスサービスも請け負う。なお、ショールームは、クラシスホームのお施主様もよく見学に訪れる本社(浜松市)のほか、東京、福岡の3カ所に設置。

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