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薪ストーブを注文住宅に設置するには?施工、メンテナンス、薪割り、周辺用品を徹底解説

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薪ストーブを注文住宅に設置するには?施工、メンテナンス、薪割り、周辺用品を徹底解説

部屋のインテリアとしても人気が高く、暮らしに“豊かさ”を与えてくれる「薪ストーブ」。
「薪をくべて燃やさなければいけない」「特別な施工が必要」といった手間がかかる一方で、それ以上の楽しみが見出せるのは間違いありません。今回も愛知県みよし市にある薪ストーブ専門の販売店、株式会社ディーエルディー(以下dld)の石井将史さんが登場。薪ストーブの設置からメンテナンス、薪の調達方法、周辺用品について、たくさんの情報を教えていただきました。

薪ストーブ本来の能力を発揮させるため、専門業者の確かな設計・施工の能力が求められる

――薪ストーブを設置するにあたって、注意すべきポイントは何ですか?
石井さん「薪ストーブに関する設置のプランニングと取り付け作業は、注文住宅の場合でもハウスメーカーさんや工務店さんが行うものではありません。なぜなら、薪ストーブを適切に機能させ、不完全燃焼によるトラブル、低温炭化現象や煙道火災を起こさないようにするための専門知識と施工技術が求められるからです。そのため、dldでは商品の販売から施工・アフターまで責任を持って行っています。
それでは、まず設置までの流れを簡単に解説します。」

● 機種選び
クラシスホームで注文住宅を建てられるお施主様が、薪ストーブを選ぶため、dldのショールームを来訪。その段階での間取りやご要望をヒアリングし、こちらから適したメーカーの機種を選定します。
打ち合わせ
クラシスホームのプランナーさんと打ち合わせ。お施主様が希望されている間取りに対して、薪ストーブの最適な置き場所を見極め、煙突をどんなレイアウトで立ち上げていくかを検討し、設置プランと見積もりを作成します。
施工
ストーブと煙突を搬入して、取り付け。作業はふたりの施工スタッフが担当します。必要であれば、ストーブ本体を乗せる炉台・炉壁も施工。プランニング通りの安全基準に沿った、確実な施工を行います。
火入れ
施工が完了したら、お引き渡し後にdldのスタッフがうかがい、実際に火を入れて使用についての説明を、しっかりと行います。
機種のご説明をしていると、「取り付け工事」に関するご質問もたくさんいただきます。本体と煙突に分けてご説明します。

本体の施工について
壁へのベタ付けや直置きはNG
本体を壁にベタ付けすることはできません。壁と本体の間には、炉壁か遮熱板を設ける必要があり、それらからも本体を離隔します(壁と炉壁・遮熱板との間も離隔)。炉壁や遮熱板を設けない場合は、可燃性の壁材や家具からは1m以上離しておくと安心・安全です。

また、直置きも当然NG。レンガやタイル、モルタル、鉄板、ガラス板を用いた炉台をつくり、その上に本体を配置します。炉台があれば、床材や下地材への低温炭化現象を防ぐことができ、火の粉や灰から床を保護します。

煙突の施工について
曲げ、横引きの少ない直線立ち上げがベスト
煙突は煙を外に送り出す以外にも空気を取り入れるための上昇気流(ドラフト)を発生させる重要な役を担っています。薪ストーブは、無電力の暖房器具なので、ファンはついていません。ですから、上昇気流が煙突の中でうまく発生しないと、燃焼室には薪を燃やす空気が送られず、あたためる力が弱くなります。このほか、煙の逆流も起こり、煙突の中に煤(すす)やタールが堆積。煙道火災の原因となってしまいます。

石井さん「薪ストーブの能力を引き出し、安全に稼働させるためには、基準に沿った煙突プランが必須。ストーブの機種にもよりますが、煙突の全長は4.5m以上を目安にしています。直線で立ち上げることができれば、上昇気流もスムーズに発生するでしょう。
間取りの都合上、直線で立ち上げることができなくても大丈夫。その場合は、曲管を使って屈曲させながら壁を抜いて立ち上げます。ただし、屈曲の回数が多かったり、曲管に長さがあると、煤(すす)やタールは堆積しやすくなるので要注意です。dldでは、屈曲でのプランニング実績も豊富なので、ご安心ください。なお、煙突も本体同様、可燃物や屋根面からは規定の寸法分離隔しなければなりません。
そして、お施主様が特に気にされる『ご近所への配慮』。薪ストーブである以上、煙突を付けてそこから煙を排出するのは避けて通れません。できるだけご近所へ迷惑をかけないために、薪ストーブを使うシーズンの風向きを計算し、風下にどんな建物があるかを調べて取り付けるようにしています。また煙突から排出されるのは「グレーの煙」をイメージされるかもしれませんが、燃焼室内が適正な温度になり2次燃焼がはじまると煙突からの煙も減り、色も無色になるんですよ。」

薪ストーブは生活道具。どんな道具もメンテナンスをしないと性能が落ちる

続いて、薪ストーブのメンテナンスについて知っておくべき情報をお伝えください
石井さん「薪ストーブのメンテナンスは、使い続けていく上で必ず行わなくてはならない大切な作業。メンテナンスをすることで効率よく、安定した燃焼を引き出すことができます。またストーブ全体を点検することにより、さまざまな破損・トラブルを未然に防ぐことができます。」

本体のメンテナンス
IRONDOG(アイアンドッグ)は部品の取り外しが容易にできて、掃除がしやすい
扉のガラスは、火を見るためのスクリーン。ここに煤(すす)やタールなどの汚れがたくさん付着していると、火の美しさも半減します。ガラスをきれいに保つには、専用のクリーナーがおすすめ。ガラスにシュッと吹き付けて、サッと雑巾で拭き取るだけで見違えるようになります。
次に本体の掃除です。炉内にたまった煤(すす)は掃除機か、ブラシを使って掃除してください。表面は汚れとサビを落とし、ストーブポリッシュという光沢剤を塗ると、新品に近い仕上がりになります。
ドイツのブルナー社がつくる「IRONDOG(アイアンドッグ)」は、鋳鉄製でメンテナンス性が抜群。容易に部品の取り外しができるので、汚れやすい内部部品のバッフルや天板は、ストレスフリーに掃除ができます。

煙突のメンテナンス
セルフメンテは難易度が高いから、プロに依頼するのがベター
煙突の施工のところで煤(すす)とタールが内部に堆積すると煙道火災や、良好なドラフトが得られず不完全燃焼の原因になるとお話しました。安全で、快適な薪ストーブライフを送るためにもオフシーズンには必ず掃除を行ってください。煙突の掃除は、場合によって円筒や曲管などを外さないといけません。加えて、屋根に登っての作業になります。さらに、専門的な道具もたくさん使うので、基本的には私たちにお任せいただくのがよいでしょう。ですが、dldではオーナー様向けに煙突掃除の講習会を開いているので、「我こそは」という方はチャレンジしてほしいです。

石井さん
「薪ストーブは、だいたい11月から使い始め、晩春頃まで稼働させるのが一般的。その後はオフシーズンであり、メンテナンスのシーズンです。dldへのメンテナンスのご依頼は、毎年3月から4月いっぱいまで早期割引で受け付け。プロが手がけるメンテナンスは、掃除だけでなく補修部品の交換もしていますので、セルフメンテナンスをしている方でも、年に1度はプロに依頼することをおすすめします。
私たちは薪ストーブを生活道具だと思っています。薪ストーブに限らず、道具はメンテナンスをしてあげると長く使えます。面倒かもしれませんが、それもまた薪ストーブの魅力なのです。」

熱心なオーナーは、山で丸太を伐採して自分で薪割りもする

石油ファンヒーターに使う灯油はガソリンスタンドに行けば購入できますが、薪はどこで調達すればよいのでしょうか?
石井さん「薪は『業者から購入する』か『自分で丸太からつくる』の2択で調達します。」

購入する場合
dldはオーナー様向けに宅配サービスを実施
宅配サービスを申し込みいただいた方には、30束分が積載できる小型のラックを2台設置。使い切る前に60束単位で電話注文いただければ、1週間ほどで配送します。ちなみに、60束は約1カ月分の量。樹種はスギ・ヒノキ・マツで、いずれも間伐材です。

自分で調達する場合
オーナー同士でつながって、“調達ツアー”へGO
熱心なオーナー様は、地域の造成の際に伐採された丸太を直接掛け合ってわけてもらっています。でも、もらった丸太をどうやって持ち帰るのかが疑問ですよね。このパターンで調達する場合は、だいたい複数のオーナー様が“調達ツアー”と題して一緒に動いています。オーナー様は、独自のコミュニティで薪ストーブに関する情報を交換しているので、そこに加われば、ツアー仲間と出会えるはず。複数のオーナー様が集まれば、丸太の運搬にかかる諸経費も割り勘できますからお得です。なお、丸太を普通車で運ぶのは無理なので、トラックを手配・レンタルすることになります。
自分で調達した後にすべきこと
自分で丸太を玉切りし、薪割りをして汗を流すことも楽しみのひとつ
丸太を調達したら、薪として使用できるサイズ(=燃料室に入るサイズ)に玉切りします。
この作業はチェーンソーが必要。切断したら、いわゆる薪割りに取りかかり、無事に薪ができたらラックに積載して最低1年間は風通しのよい場所で乾燥させましょう。薪にしないと、芯まで十分に乾燥させることができません。すぐに使えないもどかしさがありますが、それも醍醐味と感じられれば一流の薪ストーブオーナーです!

薪ストーブには周辺用品がたくさん。ひとつずつそろえていくのも楽しい

――dldは薪ストーブの周辺アクセサリーも充実しているとのことですが、具体的にはどんなものがありますか?
石井さん「エアコンは本体と室外機が、石油ファンヒーターは本体と灯油があれば、暖房器具として働いてくれます。ところが薪ストーブはそうはいきません。本体と煙突、薪のほかに、グローブや着火剤などのアクセサリー、メンテナンス用品も揃える必要があります。以下に周辺用品の一例を挙げてみました。」

アクセサリー
グローブ
燃焼しているところに薪を足す際など、手を保護してやけどを防止できます。
着火剤
焚き火と違って薪ストーブに火を入れるのはさほど難しくはありませんが、着火剤があると楽に火付けができます。
ファイヤーツール
火掻き、灰掻き、火ばさみ、シャベル、ほうきは、ファイヤーツールと呼ばれます。炉内の薪を動かしたり、灰を掻き出したり、舞った灰の清掃をする時に使います。
ラグ
“薪ストーブのある家らしさ”を演出してくれるアイテム。フローリングの保護にも役立ちます。
鋳物製の鍋
薪ストーブクッキングを楽しみたいなら、ぜひ購入してみてください。鋳物製なので、炉内に入れて使うこともできます。また、食材への熱の伝わりが絶妙になるため、美味しい料理ができます。

メンテナンス用品
ガラスクリーナー
本体の扉に付いた煤(すす)やタールの汚れも簡単に処理。市販のものよりもしっかり汚れが落ちます。
ストーブポリッシュ
本体表面のサビと汚れを落とすと同時に、磨き込むとピカピカに仕上がります。
ブラシ各種
ワイヤーブラシで鋳鉄製の天板や内部部品の汚れを、煙突ブラシで煙道内部の汚れをそれぞれ取ります。煙突ブラシは、別売りのロッドを煙突の長さにつなぎ合わせて使用します。

薪調達用品
薪割り用斧
女性でも使いやすい小型のものをチョイスして、夫婦で薪割りを楽しむのも◎。男性は重めの斧で効率よく薪割りを。
チェーンソー
伐採した丸太を玉切りするのに必要。知識と経験豊富なガイドのもとに、 立ち木を切り倒す“伐倒”にもチャレンジして山への理解を深めてみるのもいかがでしょうか。

キャンプが好きな人なら、薪ストーブのある暮らしを存分に楽しめる

――薪ストーブのある暮らしからは、手間を楽しむことの“粋”を教えてもらえそうな気がしました。
石井さん「まさにそうなんです。便利を優先しすぎる世の中だからこそ、あえて手間をかけて暮らすことへのニーズが高まっています。自分で薪を割り、火を焚き、暖をとったり、料理をしたり。そんなシンプルな暮らしの豊かさに気づき、それを求めている方が多くいるんです。アウトドアやキャンプが流行っているのも同じだと思います。忙しい毎日ですが、暮らしの原点に立ち戻り、ゆったりとした時間を楽しむ。そんな『ゆとり』のある日々を送ることが、贅沢で豊かな暮らしと言えるのではないでしょうか。」


石井将史 株式会社ディーエルディー・営業部
以前はスノーボードウェアの国内メーカーに勤務。自然と向き合うことで感じた豊かな暮らしに対して強い興味を持つようになり、その手伝いができる仕事がしたいという気持ちが抑えられなくなったので、ディーエルディーに転職。現在は、自身も薪ストーブのある暮らしを送っていることから、ユーザー視点を大切にしたアドバイスを心がけている。プライベートではアウトドア派。年中海でサーフィンを楽しむ傍ら、友人家族と焚き火を囲むキャンプも大好き。

[株式会社ディーエルディー]
創業者は薪ストーブの快適さに惹かれて販売事業をスタート。薪ストーブの普及をめざす過程では、販売だけでなく、取付工事、メンテナンス、薪の供給なども重要だと感じて、自社でのサービスを展開し始める。現在扱う薪ストーブの中では、ドイツのブルナー社、デンマークのワム社の製品が中心。周辺アクセサリーやメンテナンス用品、BBQ、ガーデンツールも販売している。ショールームは全国に9カ所。東海エリアの人には、みよし市にある名古屋ショールームの利用がおすすめ。

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