今回は、クラシスホームが出版した書籍『ストーリーのある家づくり』より、住まわれてから2年近く経過した「仕事とくらしのバランスに考慮した美容師夫婦の住まい/K様邸」をご紹介致します。
ネイビーの板壁×レンガを組み合わせたブルックリンスタイルの外観。
国道沿いで際立った存在感を放つこの建物が、ご自慢のヘアサロンです。
ふたりでヘアサロン「BEAST HAIR」を構えて10年に差しかかる頃に、サロンの移転計画が浮上しました。それまでの店舗のモダンな内装にちょっと飽きを感じていたご主人。
「次は何年経っても飽きのこない店にしたいね」というところから、建築計画が進んでいきました。
新店舗を建築するにあたってイメージしたのは、ニューヨークのブルックリン地区の街並にも馴染むような店構えでした。
ご主人は、建築雑誌やインテリア誌を山のように購入。ページをめくりながら、ブルックリンスタイルの建物がもつヴィンテージな雰囲気に、夫婦そろって心動かされたと言います。
ご主人と奥様は、美容学校時代の同級生です。
卒業後、互いに別々のサロンで就業し、23歳の時にふたりで夢のサロンを開業しました。
「結婚することとお店をもつことがイコールではないのですが、その両方ともが、はじめからふたりのライフプランにあったように思います」とご主人は振り返ります。
雑居ビルの1階賃貸物件で始めたお店が軌道に乗り、家族も増えた頃、Kさん夫婦は名古屋市近郊に住居を構えました。
通勤は片道20分。ご主人が郊外の家を不便に感じたことはなく、移転計画の当初は店舗を新築するのが目的でした。
シンプルな色合いとブルックリンスタイルで
まとめた1階の美容サロン。
2、3階の居住スペースはインテリアで遊びを効かせ
リラックスできる空間に。
「店舗の新築」という予定で計画も進めていたご主人ですが、いざ設計プランを詰めていくと、店舗の上に休憩スペースをつくってみてはどうか、もし、住居にするならこんな動線はどうだろう、と徐々に店舗兼住宅のプランに変わっていきました。
こうして完成した3階建ての店舗兼住宅。Kさん夫婦はくらし始めてから「良かった」と感じることが多々あったと言います。
「物理的に良かったのは、往復40分の通勤時間がいらなくなったこと。
それまでは登園時刻に合わせて毎朝通勤していたので、閉店準備までが慌ただしくて。通勤時間がゼロになったので、朝も子どもたちを急がせることなく登園準備ができています」と奥様。
ご主人も子どもたちを保育園にお迎えに行った後の時間もお客様からの予約が受けられる。
子どもたちは3階で妻がみていてくれているので、僕は安心して仕事に集中できます」とメリットを感じています。
新居に移ってから明らかに家にいる時間が長くなり、それに比例して夫婦が子どもと接する時間も長くなりました。
職住が一緒になった新しい家が、うれしい相乗効果をもたらせてくれました。
そんな明るい住まいをより一層明るく楽しい気分にさせてくれるのが、夫婦共通の趣味でもある、照明たち。
家の至るところにしつらえられた個性的な照明は、引渡し前の家から持ってきたものも多く、一つひとつに夫婦の思い出が詰まっています。
「仕事場はインダストリアルな雰囲気、住まいは“明るい家庭”をテーマに家づくりをしました」とご主人。
2、3階の住居スペースは、1階店舗部分のスタイリッシュな雰囲気と打って変わり、木目や白を基調としたあたたかな空間になっています。
店舗とは別側に設けた玄関から、2階へとつながる白い階段が境界線。ここを上り下りしながら、Kさん夫婦はオンとオフのスイッチを切り替えています。
住居スペースをつくるにあたって、奥様が叶えたかったことのひとつがファミリークローゼットでした。「美容師は、毎日の洋服コーディネートも仕事のうちです。
もっている服がひと目でわかる広いクローゼットはマストでした」
そんな思いから、2階の中央に10畳ほどの大容量のファミリークローゼットを確保。「あまりにも入るので家族全員のオールシーズンの服を入れました。これで、衣替えの必要がなくなったのは助かります。でも、ちょっと多すぎですね」と、奥様は笑います。
モダンなシーリングスポットは寝室に、ステンドグラス風のペンダントライトは夫婦の趣味部屋と、部屋ごとに異なる照明。また、クローゼットにはアルファベット柄のポップなタイプ、トイレにはストライプと、ドアを開けるたびに異なったクロスが現れるのも、家族やゲストを楽しませています。
多彩な2階とはまた表情を変え、3階は仕切りを設けず1フロアをふる活用したリビングダイニング。「部屋をいっぱいつくりましたが、結局みんなの場所が好きですね」と奥様。
オンタイムは1階で美容師の仕事を楽しみ、夜は家族全員でソファに座り、リラックスタイム。仕事とくらしのバランスは同じでも、オンとオフはしっかり切り替えられています。
そんなメリハリのある店舗兼住宅ですが、ときどき、その境界を超える日があります。それが、ご主人が子どもたちに「髪、切ろうか?」と提案をする日。
パパからの提案は、子どもたちをワクワクさせる魔法の言葉です。普段はなかなか入れてもらえないこの場所へ、その日は堂々と入ることができるのです。
奥様がスタイリングのイメージづくりをするモデルウィッグを恐る恐る触ってみたり、シャンプー台のリクライニングシートに座ってみたり、好奇心をくすぐる「やってはダメなこと」も少しだけ解禁です。
はしゃぐ息子さんをご主人が大きな鏡の前に座らせると、息子さんはちょっとはにかんだような面持ちに。
彼にとって、鮮やかにハサミを動かすパパの格好良い姿を鏡越しに眺めるのも楽しい時間です。
手際の良いカットが終わり、ワックスで前髪を立てたら、ちょっとお兄ちゃん顔に成長した息子さんができ上がりました。
退屈そうに隣で待っていた娘さんの髪は、奥様の手でかわいい編み込みヘアに。Kさん一家ならではの、ライフスタイルがそこにはあります。
サロンの顔ともいうべき受付カウンターは、クールなブルックリンスタイル。
メッシュのスティールロッカーや格子を貼った箱形のペンダントライトなど、
夫婦で厳選したアイテムが空間づくりに一役買っています。
一人一人、ライフスタイルが違うように、
家づくりもふたつとして同じものもありません。
「憧れ」や「想い」を形にする家づくりでは、
世界に一つだけのストーリーが生まれます。
作品としての施工実例と違い、今まで見せてこなかったその先のくらし。
それぞれライフスタイルの違うご家族のとても豊かなくらし方を
ふんだんに覗ける一冊となっています。
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